[FP/保険営業の相談]ありがちな失敗例③【提供する情報が多い/話し過ぎ】

はじめに

FPや保険営業には共通するありがちな失敗例(だけど本人は気がついていないケースがある)がございます。このシリーズではFP、保険営業の商談を聞く中で失敗しがちなケースについてお話していきます。

今回は【提供する情報が多い】です。提供する情報が多いとはどういうことでしょうか?
金融商品や保険の話は、FPや保険営業の方々にとって日常茶飯事でも、多くのお客様にとっては難解なものです。FPや保険営業が話す情報量が多すぎると、結果的にお客様は理解をするよりも混乱してしまうことがあります。このコラムでは、FPや保険営業がお客様の話を聞かないことの具体的な失敗例と、その影響について掘り下げていきます。

1.FP/保険営業が伝える情報とは
FPや保険営業の方が提供する情報には、お金にまつわる情報や国の制度、金融商品などがあります。保険だけをとってもみても種類、特徴、内容、運用方法、料金体系、加入条件、契約に関わる法的側面などが含まれます。これらをお客様に理解して頂くことはご契約の正確性と適切性を確保するために不可欠ですが、同時にお客様にとっては圧倒的な情報量になり得ます。
圧倒的な情報量の中から、お客様の状況やニーズを確認し、最適なお金のプランを導き出し、お客様の望む将来像に向けて、必要な金融商品を選定し、プレゼンテーションを行います。 

2.金融商品の説明は難しい(生命保険の例)
今回は共通する金融商品の生命保険の例で考えていきましょう。
保険の話は、専門用語が多く、人が生活する上で目に見えないリスクを具体的な保障でカバーする複雑な仕組みです。お客様はこれらの情報を日常生活で耳にすることは少ないため、理解するのに時間がかかります。
保険契約者と被保険者、保険料と保険金、支払い期間と保障期間、給付金と保険金、特定疾病給付金と特定疾病保険料支払い免除特則、特約と特則、主契約と特約、解約返戻金と契約者貸付など、FP/保険営業にとっては毎日使う単語であって違いを説明することは簡単でしょう。ただ保険について考えることは人生のなかで数回しかないお客様にとっては聞きなじみがありません。いくら分かりやすく言い換えたり違う言葉に例えたとしても、分かりにくく感じられがちです。
その前提を忘れてしまってはFP/保険営業がどれだけ一生懸命に説明してもお客様は理解できず、この人は話が分かりづらいから今どうするか決めるのは諦めようとなってしまいます。話は区切って、紛らわしそうな確認項目を混ぜて話さない。言葉は少なく、必要な情報を短く伝える。時には割愛して話す機会を改める。FP/保険営業の説明が長くなればなるほど、お客様の理解度は下がるということを忘れてはいけません。

3.情報が多すぎるとお客様はどう感じるのか
情報が多すぎると、お客様は重要な情報を見失ったり、何を基準に判断すればよいのか分からなくなります。これは、不信感や不安を引き起こし、結果として商談が破綻することがよくあります。お客様の心理状況を理解し、情報の提供のボリュームを適切にコントロールする必要があります。情報量が多すぎて最も大事なことが何だったのかわからなくなる、これでは面談のゴールが良い結果になることは非常に難しいでしょう。
例えば、お客様が加入されている医療保険に対して最新の医療保険への切り替えをご提案する場合、新旧の比較をして不満点がどう解消、改善されるのかという事に絞って情報提供すべきでしょう。「現在の医療保険に対して不満に思われている3点について、こちらの医療保険で解消できます。一つ目の・・・。」というように、情報は本当に重要なことをコンパクトに絞ることが効果的です。あれもこれも伝えようとするとかえって逆効果なのです。ただでさえ、お客様は1週間でほとんど忘れるのです。エビングハウスの忘却曲線という有名な理論を聞いたことがあるでしょうか。人はせっかく覚えた事柄でも24時間後には25%、2日後には50%、4日後には85%となり、1週間でほとんど記憶から消えてしまいます。記憶に残りやすい伝え方を心がける必要があるという事ですね。

4.話が長くなる場合の解決策

4-1.結論から話そう
商談では、結論を先に話す習慣をつけましょう。その後でメリットやデメリットの要点、よくあるご質問について話すことが有効です。お客様のニーズに合わせて、提案する保険がどのように役立つかを具体的にイメージできるように説明することが重要です。PREP(ポイント、理由、例示、ポイント)話法を使って、明確で理解しやすい情報提供を心がけると良いでしょう。これはロジカルプレゼンテーションというスキルの一つです。
4-2.無駄な情報を削ぎ落とそう
情報が多くなってしまい、お客様が情報を理解しきれない状況が起きてしまいそうな時はあえて話さないのも選択肢の1つになり得ます。言葉は短ければ短いほど記憶は残りやすいです。アメリカ大統領であったオバマ大統領の代表的なフレーズ”Yes、 We can.”は多くの方が覚えているでしょう。とても短く、とても力強く感じ、多くの方の記憶に残るインパクトがあったものです。伝えるべき事実を簡潔に伝え、感動など感情に訴える言葉をプラスすることで人の記憶は強くなるものです。

4-3.お客様の理解度を確認しながら、日を分けて進めよう
面談を複数回に分けることも有効な手段です。今日はライフプランの作成、今日は課題の整理、今日は解決策を考えるなど、区切って面談を重ねることでお客様が面談に対してのプレッシャーがなくなり安心して参加してもらうことができます。これは心理学的にも認められている効果で、面談回数を重ねることで次第に印象が良くなる「単純接触効果」と言います。面談一つ一つで得られる情報量が適切で理解しやすい内容であれば自然と次回の面談の約束も取り付けることができるでしょう。そして面談を重ねるごとに、お客様はFPや保険営業に対しての印象が良くなるので面談が進めやすくなります。

4-4.お客様の話を聞く習慣をつける
得てしてお客様は話を聞くよりも、自分が話す方が好きです。お客様とFP/保険営業の話す割合は8:2になるように心掛けてもらうと良いでしょう。初対面でもたくさん話してくれるお客様は必然と8:2の割合になるかもしれません。ただ、そうではないお客様であってもFP/保険営業が質問から会話を組み立てる習慣がついていれば8:2に近づきます。例えば「●●は聞いたことありますか?」「どういったものかご存知ですか?」「●●についてどう思われますか?」こういった質問をすることで、理解度をはかりながら面談をすすめることもできます。また既に十分に理解されているものを説明する必要がなくなります。説明を一方的に聞かされるとお客様はストレスが溜まるものです。これらを理解したうえで話を聞く習慣やスキルを身に付けることで面談の質がぐっとあがります。

まとめ
FPや保険営業にとって、お金の情報提供が最大の使命です。しかし、その情報がお客様にとって有益なものとなるためには、提供する情報の質と量、提供の仕方に気をつける必要があります。お客様にとって最も重要な情報をわかりやすく伝え、適切な判断を下していただくことが、最終的には双方にとって最良の結果をもたらすでしょう。