どうしたらお客様から信頼が得られる?ファイナンシャルプランナー(FP)として顧客ニーズを理解するために必要なスキルや心構えについて

はじめに

お客様のニーズや心の中を深く理解することは、ファイナンシャルプランナー(FP)の現場での大切な役割の一つです。他のビジネスでももちろん重要だと思いますが、お客様の人生の大事なお金のことの相談を受けるFPの仕事では、顧客ニーズを把握することは特に大事になってきます。

お医者さんの例などを取ると分かり易いかと思いますが、著者は病院にいく時、自分の患っていることの症状や状態をしっかり聞いてくれて、また自分の性格にも合わせてお薬の使い方などの相談に乗ってくれるお医者さんはいつもいいお医者さんだなと感じますし、あまり話も聞いてもらえずなんとなく薬を処方されると「本当に大丈夫か?」と感じることがあります。

お金の世界ではなおさら、お客様それぞれお金の有意義な使い方は異なりますし、将来の計画や家族への想い、また不安に感じることも異なってくるので、”お客様のニーズをしっかり理解すること”はとても重要になってきます。

ではお客様のニーズを理解するためにはどのようなことが必要でしょうか。
まずは”お客様の成功を願う強い想い”が大事ですが、実際には想いだけではなく、しっかりしたスキルが必要だと言われています。そこで本日は顧客ニーズを把握、理解するためのスキルについてご紹介していきます。

ここでは事例を交えながら「必要なスキル」を体系的に列挙していきます。

1.傾聴の技術

「傾聴」は営業スキルの重要な要素の1つであり、顧客とのコミュニケーションにおいて非常に役立ちます。傾聴は、相手の意見や感情に注意深く耳を傾け、理解しようとする能力を指します。相手の話に注意を向け、言葉だけでなく、声のトーン、ボディランゲージ、感情にも注目します。質問を通じて相手の意見や要望を掘り下げ、フィードバックを提供して、相手が話す意図を理解しようとします。具体的な方法としては「大きくうなずく」「オウム返し」などがあります。
例えばFP相談の場面では、はじめにお客様が老後のお金のことで心配があるというお話をしたとします。そのような時、すぐに「それであれば有効な貯蓄手段があって〜」という解決策を説明するのではなく、まず「その点がお悩みなんですね」「それはたしかにこのままだと大変ですね」とうなずきながらしっかりお話を伺います。すると自然とお客様は自身の話を続けて話してくれるものです。

2. 共感力
お客様の気持ちや状況を自分のものとして感じ取ることができる力です。まるで、お客様の心の中に寄り添うように感じることで、お客様の深い理解へと繋がります。

例えば、お客様とライフプランシミュレーションを作成している場面で、教育費をいくら貯めるのかという質問になるとお客様も子供への想いや愛情を口にしながらどれくらい教育費を貯めたらよいのか悩まれることがあります。そのような時、FPも他人事ではなく「このお客様のケースだったら自分は自分の子供に対してどうするか」という共感を持って相談にあたります。共感をしていると、自然と声や表情にその想いがあらわれるものです。お客様もFPに自分の話を共感してもらえていると感じると、安心して心置きなく今の気持ちや悩みなどを話すことができるようになります。

3. 質問の技術
「質問スキル」は、営業において非常に重要なスキルの1つと言われており、顧客との対話を通じて情報を収集し、顧客のニーズや要望を理解するために用いられます。具体的にはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョン、掘り下げ質問などがあります。

オープンクエスチョンとは通常、「何(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」などの疑問詞で始まるもので、お客様が自由に話せることで問題の根本的な部分を伺うことに有効です。一方でクローズドクエスチョンとは「はい」「いいえ」など単語や短いフレーズで答えてもらう質問で、お客様が答えることや話すことにストレスを感じにくい状態で面談を進めることができる技術です。オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを織り交ぜながら、お金の計画に必要な情報をまとめていきます。掘り下げ質問は深掘りとも言います。一つ質問をして返ってきた回答に対して「そう思うのは何故ですか?」などお客様の思考を掘り下げることで、相談当初では見えていなかったお客様の本来の価値観や本当の悩みなどを汲み取ることができます。表面上の相談内容だけを伺っていては本質的な問題解決に導くことは難しいです。

例えば、FP相談の場面でもお客様ははじめご相談内容を伺うと「副業を考えている」「NISAでの運用が知りたい」と表面的な質問や回答をされることが多いですが、一つずつ紐解いて質問していくと「夫の体調があまり良くなく、子供が大学生になった時に教育費が支払い続けられるのか不安に感じている」というような本音に辿り着くことがあります。このお客様の深いところにある本音をしっかり把握しなければ、良い提案には辿り着きません。

4. 観察力

言葉だけでなく、お客様の表情や身振り、態度からも情報を読み取ることができる力です。時には、無言の瞬間が真実を教えてくれることもあります。

分かりやすいものだと、お客様が腕組みをしていたら、心を閉じている状態です。FPのことをまだ信頼していない状況では正直にお金の悩みを伝えにくいもの。そんな時に人はボクシングのガードをするように腕組みをして防御の態勢になります。まずはFPが笑顔で手を広げた状態で面談をしてみましょう。少しずつお客様の心も開いてくるものです。

また会話のなかで「●●●なんですが」と逆説で言葉が終わるときは、逆説のあとにくる言葉が本音の部分。そこを伝えるのは気が引けて割愛し逆説でフレーズが終わることがあります。「●●●だけど、本当は何でしょう?」と本音の部分を話しやすい投げかけをすることで本当に相談したかった悩みを話してもらえるようになります。その時にお客様が話すまで無言の瞬間が訪れても、話し出すまで我慢してみることで本音を話し出してくれるものです。

5. 感謝の気持ち
お客様が自分の話や悩みを共有してくれることへの感謝の気持ちを忘れずに持つこと。これが、お客様との信頼関係を築く土台となります。

まずは、面談の時間をつくってくれていることに感謝すること。FPが自分の時間だけを優先していては信頼関係を築くことは難しいです。面談の日時や提供物の期日など時間の約束を守ることは社会人としても当たり前ではありますが非常に大切な点です。また限られた面談時間を最大限に有効にすすめることは、お客様の時間を尊重していることに等しいです。

6. 解決志向
お客様のお金の問題や悩みを理解した上で、それを解決するための方法や手段を考え、提案する力。お客様のために最善の方法を模索する姿勢が大切です。

どれだけ良い人だと思われても、どれだけ面談が盛り上がってもお客様のお悩みの問題解決が出来なければ良いFPとは言えません。これはお医者さんに例えると分かりやすいです。いつもニコニコしていて診察がストレスではないが、病気を直してくれないお医者さんと、ぶっきらぼうでも何の病気か診断してくれて、その病気に聞く薬を処方してくれて、そもそもの生活習慣を改善することで再発を防げるというアドバイスをくれるお医者さんがいたとします。どちらのお医者さんが本当に良いお医者さんと言えるでしょうか。どちらの良い部分を兼ね備えることがお医者さんとしては素晴らしいかもしれませんが、後者のお医者さんとしての力があってこそお医者さんとしての役目を全うできるはずです。

これはFPも同じことが言えます。教育費の心配で相談にきたけど本当の問題は何も準備していなかった老後の生活資金についてということが分かり、その為の積み立て投資が実践可能なものを提示してくれて、そもそものお金の管理方法からアドバイスができるFPは、良い人だけど何解決してくれないFPと比べて存在価値は雲泥の差になってしまうでしょう。

まとめ

お客様の心の中を深く理解するためには、多くのスキルや心の準備が求められます。しかし、それらは特別なものではなく、日常の中で育てることができるものばかり。常にお客様の立場に立ち、心の中に寄り添う姿勢を持ち続けることで、真の理解と信頼関係を築くことができるのです。