新NISAと変額保険で迷っている方へ。それぞれのメリット・デメリットまとめ

資産運用において、個人が直面する選択の一つに積立NISAと変額保険があります。これらは異なる特性を持ち、それぞれの選択には検討すべきメリットとデメリットが存在します。このコラムでは、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、NISAと変額保険の解説を行います。

1.投資の必要性の背景
投資の必要性は、以下の要因から生じています。

インフレ対策
現在の預金金利だけではインフレーションに対抗できない可能性があります。保有資産を減らさない意味でも、インフレーションに見合うように運用して資産を保有する必要があります。

資産形成とリタイアメント
リタイアメント後に収入が老齢年金のみとなったとき、生活費だけではなく旅行などのレジャー費用や介護費用、病気に対する費用など、生活するためのお金のほかにも万が一の際にもお金が必要となってくるため、資産形成のために積極的な資産運用が必要です。

資産の分散とリスクヘッジ
銀行預金などだけではなく、投資により株式や投資信託、国債などに資産を分散させ、物価上昇等へのリスクを分散させることが大切です。

生活の変化への対応
将来の不確実性に備え、柔軟な資産を築くことが重要です。

2.NISAの概要
通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して20.315%の税金がかかります。
NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です。
イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称がついています。
従来のNISAは、成年が利用できる一般NISA・つみたてNISA、未成年が利用できるジュニアNISAの3種類があります。
一般NISAは、株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。
つみたてNISAは、一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できます。
ジュニアNISAは、株式・投資信託等を年間80万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。
2024年以降から、上記の制度が刷新され、
・非課税保有期間の無期限化
・口座開設期間の恒久化
・つみたて投資枠と、成長投資枠の併用が可能
・年間投資枠の拡大(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円まで投資が可能。)
・非課税保有限度額は、全体で1,800万円。(成長投資枠は、1,200万円。また、枠の再利用が可能。)
となります。

3.NISAのメリットとデメリット
1. 税制優遇
NISAの最大の魅力は、投資によって得た利益が非課税であることです。本来であれば、投資によって得た利益は20.315%(2023年12月時点)の税率で税金を支払う必要があります。この税制優遇の制度は将来の資産形成において、大きなアドバンテージとなります。税金の節約は将来のリタイアメント資金の拡充につながります。

2. 自由度が高い
NISAは数多くの投資商品が選択できます。そのため、自分のリスク許容度や資産目標に合わせて柔軟に運用できます。これにより、個々のニーズに合わせた資産運用が可能です。

3. 長期積立に向いている
半永久的な投資期間が定められているため、将来のリタイアメント資金(老後資金)を積み立てるのに適しています。積み立て期間が長いほど、複利の効果とドルコスト平均法の効果を最大限に生かせます。

4. 制約がある運用期間
NISAは半永久的な運用期間を定めておりますが、1,800万円の限度額を設定しております。上限金額に達してしまうと、税制優遇の制度が活用できなくなります。闇雲にNISA口座で運用を行うだけではなく、将来の計画を立てたうえで、柔軟性に制約が生じる点を考慮する必要があります。

5. 制約された商品
NISAでは数多くの運用商品を選択できる一方で、すべての商品に活用できるわけではありません。一定の条件を満たす商品にしか投資できないため、全ての投資商品を利用することが難しい場合があります。場合によっては、投資家が希望する商品や戦略を選択する自由度に影響を与える可能性があります。

4変額保険の概要
一般的な生命保険の機能(死亡保障、高度障害保障、など)を持ち合わせながら、株式や債券を中心に資産運用をし、運用実績によって保険金や解約返戻金が変動する保険です。一般的に生命保険の弱点とされていたインフレリスクに対し、運用実績に応じて保険金額が増える変額保険はこの弱点をカバーした保険となります。
このように死亡したときは、基本保険金に上乗せして変動保険金を受け取れる場合がありますが、運用実績により変動保険金がマイナスになっても、基本保険金額は最低保証されます。
保険期間には、「有期型」(一定期間保障される型、いわゆる養老保険)と「終身型」があります。「有期型」には満期保険金がありますが、運用実績により変動し、最低保証はありません。「有期型」「終身型」とも、解約返戻金に最低保証はありません。
保険の機能で万が一の際の保障をカバーしながら将来に向けた資産形成を行うことができる生命保険です。

5.変額保険のメリットとデメリット
1. 保障要素がある
変額保険は資産運用と同時に死亡保障や生存保険、保険料払込免除特約などの保障要素を含んでいます。これにより、万が一の保険事故が発生した際にも将来の資産形成にむけたリスクを軽減しながら資産を積み立てることができます。大切な家族や扶養者を守りながら資産を形成できるのが魅力です。

2. 資産運用と保険が一元化
変額保険は資産運用と保険を一つの契約にまとめて提供するため、手続きが簡便で、資産運用と保険の管理が一元的になります。これは、手続きの煩雑さを避けたい投資家にとって利点となります。

3. 手数料やコストが高い場合がある
変額保険には契約手数料や保険関係費用が発生するため、他の投資商品と比較してコストが高くなることがあります。これは、投資家が受け取るリターンに影響を与える可能性があります。

4. 解約に際して損失が生じる可能性がある
変額保険は一定期間継続することが前提であり、途中で解約すると損失が生じることがあります。急な資金の必要性やライフイベントの変化に対処する際、この制約は投資家にとってデメリットとなります。

6. NISAと変額保険で共通する点(株式を中心にした投資信託)
いずれの商品においても、株式を中心とした投資信託で資産運用をする点では大きな変わりはありません。前述のメリットデメリットで記載の通り、選択する上でのポイントは「保険機能の有無」と「投資先の種類」となります。資産運用を行いながら「絶対に」貯めなければいけない資金は、万一の事故が発生した際にも「絶対に」貯めなければいけない資金かどうか、貯まっていない時に万一の事故が発生したとしても保険金が下りてくる変額保険はリスク対策が取れる商品であると言われます。しかし保険関係費用が発生するデメリットがあるため、同じ運用利率であったとしても変額保険の場合は貯まっていく額が少なくなります。また投資先の種類については、いずれも株式や債券を中心とした投資信託とはなりますが、相対的に変額保険の場合は代表的なファンドしか用意がないため、選択肢が少ないです。日本国内、アメリカ国内、世界規模や発展途上国に目を向けたファンドや、REITや金などのファンドをポートフォリオに組み入れたい投資家は物足りないかもしれません。その反面、あまりにも膨大なファンド数に対し、投資家目線で選びきれない場合は代表的なファンドのみ有し、適切なアドバイスができる担当者がつく保険商品のほうが選びやすいという声もあります。

7. ・NISAと変額保険でお客様が悩むポイント
前述の通り「運用実績」と「ポートフォリオの組み方」に悩むお客様が多いです。運用実績については保険関係費用の発生により、相対的に増える金額としてはNISAのほうが有利です。しかし投資家のライフステージや資金状況、到達したいゴールに対しての的確なポートフォリオの組み方についてはNISAの場合だと選択肢が多すぎて選びきれないといった声も上がっています。

8.NISAが向いている人、変額保険が向いている人
それぞれのメリットデメリットがあるため、簡単にはまとめられませんが、あえて言うのであれば目的を分けて持つことが大切だと思います。優れた税制メリットを有するNISAは老後資金等、自分自身のために、長期的スパンで資産形成できる目的に向けて向いている商品です。その反面、1,800万円の購入額の上限が設定されているため、あくまで一つの資産の持ち方というところに落ち着いてくるかと思われます。また変額保険については「絶対に」貯めなければいけない、例えばこどもたちの教育資金や将来の住宅購入資金に向いている商品です。目標額を貯める前に万が一の事故が発生した場合であったとしても資金準備ができるような保険機能がついているためです。副次的効果として運用により資産形成ができていた場合に老後資金に回したりすることも可能となります。

結論
NISAと変額保険は、それぞれの特性を考慮して選択することが重要です。将来の計画やライフスタイル、リスク許容度を踏まえつつ、専門家のアドバイスを受けることが良い判断に繋がります。優れた投資は、将来の経済的な安定を築く鍵となります。