[FP/保険営業の相談]ありがちな失敗例①相手の話を聞かない/ヒアリングが足りない

はじめに

FPや保険営業には共通するありがちな失敗例(だけど本人は気がついていないケースがある)がございます。このシリーズではFP、保険営業の商談を聞く中で失敗しがちなケースについてお話していきます。

今回は【相手の話を聞かない】です。相手の話を聞かないとはどういうことでしょうか?
このコラムでは、FPがお客様の話を聞かないことの具体的な失敗例と、その影響について掘り下げていきます。

1成績の良くないFPがやりがちな面談

成績の良くないFPの商談を聞いていると相手の話を聞いてないと見受けられることが多々見受けられます。多くのその商談の最後のパターンは、FPとしてのビジネスチャンスである金融商品の提案が成約に至らない結果となってしまっているのです。まず相手の話を良く聞き、お客様の本音をしっかり把握することが大事だと言われています。

2.FPの仕事におけるヒアリングの重要性について

FPの仕事におけるヒアリングの重要性は言わずもがな。ヒアリングは、単にお客様が何を話しているかを聞く行為にとどまらず、その背景にあるお客様の価値観や生活状況、将来の目標、そしてお客様本人が気付いていなかったような潜在的な不安・ニーズを深く理解するプロセスです。特に、お客様は初回面談でいきなり本音を話してくれないです。はじめて話をする相手に全て話すのはなかなか難しいことですし、お客様自身も頭の中で自身の状況や気持ちについて整理できていないことの方が多いです。したがって、FP側がしっかりお話をヒアリングできるようにする必要性があります。

2-1.顕在ニーズだけでなく潜在ニーズに触れることでお客様の気持ちは動く

たとえば、あるお客様が「教育費のために貯金をしたい」と相談されたとします。FPがこの情報をもとに即座に教育費用のための貯蓄プランを提案したとしましょう。多くのお客様は、はい分かりましたと契約することはほぼありません。
しかし、もしヒアリングをさらに深めて、「なぜ教育費の貯蓄に対して不安を覚えるのか」「どのような教育をお子様に受けさせたいのか」「そのためにどれくらいの資金が必要と見積もっているのか」などと質問を続けると、お客様も考えながら自分の言葉でその理由を語ってくれるようになり、お客様の本当のニーズが明らかになってきます。

このケースでは例えばお客様ご自身が私立の中高一貫校を卒業しているためお子様の進路も私立を望んでいる、、子供が小学生になるまではパートで働くことを希望しているがお金が足りるのか心配しているということがあるかもしれません。

まずはお客様の家庭環境や考えていることをしっかり把握することが、ご提案をする前段階でとても重要になってきます。お客様のことをしっかり理解していることが後のご提案の段階でも大きな説得力を発揮します。

2-2.ヒアリングで信頼関係を築くことができる

また、ヒアリング能力はお客様との信頼関係の構築にも不可欠です。お客様が自分の話に真剣に耳を傾けてくれるFPには、より深い信頼を寄せ、長期的な関係を築く可能性が高まります。一方で、ヒアリングが不十分だと、お客様は自分の思いが理解されていないと感じ、提案された解決策に対しても疑問を持つことになるでしょう。

FPからの質問にお客様が回答した際は、必ずその理由をしっかり聞くことが重要になってきます。お客様の回答に対しては「なぜそう思われたのですか?」と質問を行うことが重要です。お客様の回答に対して「この回答だから、こういう理由だ」とFP自身が勝手に思い込んでしまい、それ以上の質問をしないことはよく起こりがちです。本当の答えはお客様しかもっていないという事を肝に銘じておきましょう。

このように、ヒアリングはFPにとって、お客様の顕在・潜在ニーズを把握し、そのニーズに合わせた最適なお金の計画の作成や解決策、金融商品の提案を提供するための基礎となります。

3.なぜ聞かないのか

ではなぜこれほど重要なヒアリングをFPがしないことが起こるのでしょうか。
お客様の願望や問題を深く聞き出さない理由は様々ですが、主なものを記載します。お客様の背景にあるストーリーを理解する必要性を感じていない自分の話が長く、結果的にヒアリングの時間がない」
・質問をすることが習慣になっていない、質問のスキルがない
・どのタイミングでどんなことを、何を質問したら良いのか、どれくらいの質問が必要なのかそもそも分かっていない

といった点が挙げられます。これらは、しっかり営業やコンサルティングのトレーニングを受けたことがない、受けたことはあるが実践できていないことに起因することが多いです。

以下にそれぞれの理由の詳細を記載します。

3-1. お客様の背景にあるストーリーを理解しようとしない

お客様の背景にあるストーリーを理解しようとしないことは、FPが犯しがちな大きな過ちです。お客様の背景には、その人の価値観、経験、家族構成、仕事、将来の夢や不安など、お金の状況に直接影響を及ぼす要素が含まれています。これらの要素は、お客様一人ひとりのお金の計画において独自の役割を果たし、その人にとって最適なアドバイスを形成するために不可欠です。

お客様の背景にあるストーリーを無視すると、FPは誰にでもあてはまるような標準化されたアドバイスや一般的な金融商品を提案する傾向にあります。これはお客様の相談内容に必ずしも適合しない場合があります。例えば、あるお客様が住宅ローンの相談に来たとします。FPがお客様の家族構成やキャリアプラン、生活目標を深く理解せずに、ただ低金利のローン商品を支払い期間35年で勧めることは、お客様の実際のニーズに合わない可能性があります。もしかするとそのお客様は、短期間での転職や海外移住を考えており、20年未満の返済計画を求めているかもしれません。

また、お客様のストーリーを聞くことは、その人の価値観や優先順位を理解することにも繋がります。たとえば、退職後の生活において最も価値を置くことが「家族との時間」であるお客様に対して、効率だけに焦点を当てたお金の計画を提案するのは適切ではありません。そのお客様にとっては、お孫さんの教育資金や家族での集まりを可能にするようなお金の計画が適切かもしれないのです。例えばそのお客様に対して保険を活用するにしても、「保険で残された家族を守りたい」という想いよりも「老後も家族との時間を有意義に過ごす」ための資産形成に繋がる保険提案であれば喜んでいただけるのではないでしょうか。

このようにお客様のストーリーを無視することは、FPや保険営業がお客様の真のニーズと目標に対して把握できず、結果的にお客様に最適な提案ができていない状況を生み出すことになります。このため、FPはお客様一人ひとりの言葉に耳を傾け、それを理解し、お客様のお金の計画に組み込むことが不可欠です。お客様との関係構築と信頼の確立には、このような個別化されたアプローチが欠かせません。

3-2. 自分の話ばかりをしてしまう

FPや保険営業が自分の話ばかりをしてしまう行動は、お客様にとって非常に大きなフラストレーションの原因となります。このような状況は、FPや保険営業がお客様よりも自身の経験や意見、商品知識を前面に出し過ぎることで生じます。FPや保険営業は専門家としての自信や知識を示したいという意図があるかもしれませんが、それが過ぎるとお客様の話を遮り、お客様のニーズや懸念を十分に理解する機会を失います。

例えば、FPが新しい金融商品について熱心に語り、その利点や成功事例について長時間話し続ける場合を考えてみましょう。これにより、お客様は自分の状況や要望を共有する時間を奪われ、お客様の持つ独自の問題や目標について話す機会が減少します。お客様は自分が理解されていないと感じ、FPに対する信頼を失い始めるかもしれません。

また、FPが自分の話ばかりするもう一つの理由は、コンサルティングの技術が未熟である傾向があるためです。これは、お客様がFPとのやり取りでパーソナライズされたサービスを受けていると感じられないという状況を生み出します。お客様は自分の価値観や目標がFPによって適切に反映されるサービスを求めており、自分のニーズに合わない情報や商品を押し付けられると感じると、サービスに対して否定的な印象を持つようになります。

最終的に、FPが自分の話ばかりをしてしまうという行動は、お客様との信頼関係を築く上で障害となります。お客様中心のアプローチを取り、お客様の話を聞き、理解し、共感することが、成功するFPには不可欠です。お客様のニーズに真に応え、価値あるソリューションを提供するためには、お客様の視点を常に最優先に置くことが重要です。

3-3. 説明が長い

説明が長いとお客様に、感じられるとFPや保険営業がその後どれだけ熱く語ったとしてもお客様の印象は「とにかく話が長い人だ、この話は私には難しすぎる」と、興味があったとしても早くこの時間おわらないかな、としか思わなくなってしまいます。一般的に、人は話を聞かされるよりも、自分が話す方が好きだということをまず理解する必要があります。

自分の説明が長いと感じているFPや保険営業の方は、まず結論を先に伝えるようにしましょう。そしてパンフレットに沿ったような説明をどんどんとするばかりではなく是非、具体例を話しながらプレゼンした方がお客様に伝えたいことが伝わります。分かり易い言葉を選びながら、お客様目線で話すことが出来れば必ず伝わる事でしょう。また、会社紹介や自己紹介もお客様のヒアリングがしっかりできた後で行う方がうまく行くことも多いことを念頭に面談冒頭の会話のプランを作りましょう。

説明が長いとお客様は話を聞きたくなくなる、という事が分かっても慣れないうちは、いざやってみるとついつい長く話してしまい、端的に話をすることが難しく感じるかもしれません。一つの目安として面談中に準備してある飲み物の減り具合を確認したら気付きやすいです。

3-4. 質問をすることが習慣になっていない

質問することが習慣になっていないとFPや保険営業の説明はセリフを読み上げるマシンのようにお客様は感じてしまう可能性があります。あくまで面談は人と人、会話で成り立ちます。テンポの良い会話のキャッチボールをすることで面談を進めることが大切です。
お客様に言ってもらいたいフレーズ、これをFPや保険営業が口にしては、せっかくの大事な面談の時間がまるで学校の授業のようになってしまいます。学生時代を思い出してみてください。教科書や先生のノートをひたすら板書しながら読み上げる先生の授業中、居眠りしている生徒がいませんでしたか。面談中のお客様も同じことを感じているとしたらその商談はきっとうまくいかないでしょう。このFPは話が長いなと思われてしまったら、次のアポイントにはつながらないでしょう。面このようなケースではお客様は「次の予定がきまったら、こちらから連絡します」とという断りの常套手段を使われることになるでしょう。

たとえば、お客様が「老後のために貯蓄を始めたい」と述べたとします。質問を習慣化していないFPは、この情報をそのまま受け取り、一般的な退職貯蓄プランを紹介するかもしれません。しかし、これではお客様の退職に対する具体的なビジョンや期待を見落とすことになります。退職後に特定のライフスタイルを送りたい、特定の趣味に資金を使いたい、家族に資産を残したいなど、お客様個々の希望や状況に合わせた提案はできなくなります。より具体的に現実味を帯びた想像をしてもらうことで人は行動に移しやすくなります。

FPが質問をすることを習慣にしていなければFPがお客様の状況を完全には理解せず、効果的なライフプラン作成等ができないリスクを高めることになります。質問スキルを高めて、効果的な質問を通じてお客様の情報を引き出し、その情報をライフプランに組み込むことで、FPや保険営業はお客様の期待に応え、信頼関係を築くことができます。

4.相手の話を聞かないまま商談を続けるとどうなるか

お客様の深いニーズを理解していない状態で商品を提案すると、それがお客様の実際の問題解決に繋がらない可能性があります。お客様は本質的な解決を望んでおり、単なる商品の説明では満足しません。

お客様が問題解決されていないと感じると、よく「もう少し考えます」という返答をします。法人営業の方は「検討します」というほぼ断り文句と言える返答を受けることになります。これは、提案された内容に納得がいっていない、または信頼関係が築けていないことの表れです。 結果として、FPとお客様の間で契約が成立せず、お客様の問題も解決されずに相談が終わってしまうことになります。これは、FPや保険営業にとってもお客様にとっても望ましくない結果です。

5.ヒアリング力を高めるには

相手の話を聞かずに面談が失敗に終わってしまう面談が多い、ヒアリング力が足りていないと感じる場合の解決策としては以下のようなことが考えられます。

・できる人に聞く
商談やヒアリングのできる人に教えてもらうというのは一つの近道です。成績の良い人ほどヒアリングはしっかりできていることが多いです。

・ロープレに取り組む
自身1人で改善することが難しい、自身では気付きにくいクセなどがありますので客観視してもらえることで課題が分かりやすくなります。 また反復することで身につくものなので、練習しても身につかないというわけではないので安心して是非取り組んでみましょう。ロープレ相手の話を聞いてみる(お客様役をやる)ことでお客様の気持ちがより分かるようになることもあります。

・学びの時間をつくる
社内研修に積極的に参加する、外部研修を受けてみることで新しい発見を得ることができることもあります。また質問スキルの本を読むなど隙間時間を活用することで学びの時間を確保するのもおすすめです。

質問スキルを向上させるには学びと経験の両方が重要です。ただ、その面談一つ一つを大切にするために準備を万端にしてのぞむのかどうかで結果は変わってきます。

まとめ

FPとして成功するためには、お客様の話をしっかりと聞き、その人の生活に合わせた最適なアドバイスを提供することが不可欠です。ヒアリングの重要性を理解し、実践することで、信頼関係を築き、お客様の真のニーズに応えることができるでしょう。このような姿勢が、FPにとってもお客様にとっても最良の結果をもたらすのです。
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