[FP/保険営業の相談]ありがちな失敗例②【専門用語を使いがち】

はじめに

FPや保険営業には共通するありがちな失敗例(だけど本人は気がついていないケースがある)がございます。このシリーズではFP、保険営業の商談を聞く中で失敗しがちなケースについてお話していきます。

今回は【専門用語を使いがち】です。専門用語を使いがちとはどういうことでしょうか?
私たちが日々送る生活のなかでお金は付きものです。現金だけでなくNISAや保険など、存在は誰もが知るところでしょう。しかし、その仕組みや必要性などは一般にはなじみが薄く、理解しにくいものです。特に保険に加入した方の中には、FPや保険営業の人が分かりやすく勧めてくれたから加入した、そんな方も多いのではないでしょうか。そんな信頼をされるFPや保険営業の人はどうやって分かりやすく説明をしてくれたのでしょう?
このコラムでは、これからFPや保険営業をしてみようと考えている人や現在活躍中の方に向けて、FPや保険営業の方がお客様とのコミュニケーションで陥りがちな専門用語を面談中に使ってしまうという失敗と、それを避けるためのコツを解説します。

1.専門用語をついつい使ってしまうFP/保険営業は多い

まずはじめに、自分たちにとってはいつも使っている専門用語は、お客様にとっては1年に1回聞くかどうかという単語であるということを理解する必要があります。FP/保険業界でよく見られるのが、専門知識を知っているが故についついお客様の前でも使ってしまいがちということです。日々の業務で使うツールや用語、ライフプラン内での単語やそもそもライフプランという単語も当たり前のように使っているFPや保険営業の方はたくさんいます。「ライフプラン」、「保険期間」、「解約返礼金」、「積立利率」など専門家にとっては当たり前の言葉でも、お客様は紛らわしく感じることがあります。

初めて車を買おうとしたときにディーラーの方に、「初めての車がFR車を選ぶなんて素敵ですね!この車の前後重量配分は52:48と街中でのコーナリングはスパスパいけて気持ち良いですよ。ただその比率なので限界コーナリングではカーブ手前のブレーキングで荷重移動を考慮してあげてくださいね。」なんて専門用語を多用して説明されたら悪い気はしなくとも、よし、とりあえず今日は帰ろう、と思うはずです。見た目がなんとなくいいなと思った、ただそれだけで店内に足を踏み入れた自分が浅はかだった、なんておもってしまうかもしれません。実際このようなディーラーの営業はあまりいないと思いますが、FPや保険の世界では目に見えないものを取り扱うため、お客様に対してこうした専門用語を多用する状況が起こりやすいです。
この例のディーラーの方も親切心から話しかけていますし、嘘を言っているわけでもないし、来店してくれたお客様を盛り上げようと褒めようと話しかけています。ただ上手くいっていないですよね。

2.専門用語を使って話されると

特に金融業界は目に見えないものを扱うのでお客様に対してわかり易く説明をするということ自体が難しいと心得ておくべきです。お客様は話の理解ができない状況になると、面談の話の内容自体に興味がなくなります。そして、この担当者と話をするのはやめよう、となります。
金融や保険の専門用語を用いて面談することでお客様の金融・保険の知識や理解度をはかることに有効である場合もあります。ただ、多くのお客様にとっては未知の言語に等しいことが多いのだとFPや保険営業の方は改めて認識しながら面談をする必要があります。専門用語を頻繁に使用することで、お客様は何を言っているのか理解できず、心理的な距離を感じるかもしれません。お客様が置かれている心理状況を考えると、以下のような感情や反応が生じることが考えられます。

▼不安と混乱
自分の大切なお金に関する重要な決定をする際に、専門用語が理解できないと、お客様は自分の状況や決定が正しいのか不安を感じます。専門用語で話された部分は耳に残らないので情報が不足していると感じたり、内容を完全には理解できないと感じます。お客様が話の内容を間違った捉え方をしてしまう恐れがあります。学生時代を思い出してみてください。病気で1日、2日休んだあとの授業についていくことを難しく感じることはありませんでしたか?その不安が1時間の面談中に発生しているのです。

▼不信感
FPや保険営業の言葉を信じたいけれども、理解できない内容に対して疑問を持ちます。その疑問は騙されているのではないか、わざと分かりにくく話しているのではないかと思われてしまいます。結果的に提供されるサービスや製品への信頼を損なうことにつながります。例えばパソコンを初めて買おうとお店に行った時に、いくつかのパソコンをスペックを羅列しながら比べられても何の話をしているのか、自分が使おうとするシチュエーションにどれぐらい合ったものなのか判断するのは難しいでしょう。興味があるから分かるだろうというのはFPや保険営業の方が陥りやすい大きな過信の可能性があります。

▼関心がなくなる
理解が追いつかない場合、お客様はFPや保険営業の話をすること、そのものに興味を失います。想像してみてください。お客様がレストランでメニューを開いたとき、料理の名前が全てフランス語で書かれているとします。料理の内容や味も説明されておらず、ウェイターも専門用語を使って説明するだけです。この状況では、お客様は何を注文すればいいかわからず、結局、食事を楽しむことができないかもしれません。同じように、保険の説明が専門用語だらけであれば、お客様はどの保険が自分に適しているか理解できず、最終的には保険加入への関心を失ってしまうかもしれません。重要な情報を見逃したりする以前に、FPや保険営業の方との面談を継続する意欲を失うかもしれません。
これらの反応は、お客様が保険に加入する課程で感じる可能性のある負の感情の一例です。では、負の感情を引き起こす可能性のある専門用語とはどんなものがあるでしょうか。必ず確認しながら面談を進める事をおすすめします。では、どのような単語がお客様にとって専門用語と感じるレベルなのでしょうか。

3.専門用語とは
どのような専門用語があるかを紹介していきます。
例えば保険の場合、
「解約返戻金」「積立利率」「保険関係費」などの用語は、保険と金融の専門家には日常的な言葉。しかし、これらは一般の方には聞きなれないもので、壁となり得ます。
「掛捨て」か「積立」か。日本語として誰しもが理解できるだろうとFPや保険営業の方は思うかもしれません。ただ、はじめて保険について考えるというお客様にとっては、保険が解約した時にお金が返ってくるかどうか、という価値観を知らない方もいます。そんなお客様に「これは掛捨て保険ではありません」と言っても混乱してしまいます。
この場合では、保険には途中で解約したり約束した期間まで保険料を払い終わった後に、お金が全く返ってこないものと、半分ぐらい返ってくるものと、全額返ってくるものと、増えて返ってくるものがあります、という説明から入る必要があります。例えばFPの場合
ライフプランを作りましょう、だけだとお客様に伝わっている可能性は極めて低いです。いつもライフプラン、キャッシュフロー表を作成している側はその重要性や価値を理解していても、初めて体験するお客様には単語そのものが分かりません。
まずはキャッシュフロー表のサンプルを見て頂きながら、横軸が年齢、縦軸が家族構成、収入、支出、年間収支が書かれていることを伝えます。これをグラフ化することで一生涯の収支を見通すことができます。もし、いまお子様の教育費が心配と思われているかもしれませんが、ひょっとすると老後の生活費が足りなくなるかもしれない、そんなことも確認することができます。将来のお金の課題が事前に分かったらどうでしょう?お金の計画をたて、実行していくことで、より良い未来をご自身の力で現実にすることができます・・・ここまでお伝えして、やっと伝わるのではないでしょうか。「ライフプランって聞いたことありますか?」という質問や「ライフプランを作ってみましょう」という説明だけでは実はお客様には何も伝わっていないと心得ましょう。

5.そうならないために
お客様が自分のニーズに最適な投資商品や保険を選ぶための十分な知識と理解を持つことができるよう、FPや保険営業は専門用語を避けるか、使わざるを得ない場合でもそれを丁寧に説明する責任があります。お客様の理解度を確認しながら、優しく、またシンプルに情報を伝えることが大切です。
金融や保険の話をお客様にするときには、小学生にも分かる話し方、単語を用いるようにしてみましょう。はじめてお金の相談をされるお客様には分かりやすいと感じてもらえるでしょうし、専門用語もある程度ご理解されている何度かお金の相談をしたことがあるお客様であったとしても、分かりやすくシンプルに話してくれるFPの方が今までのFPより優秀だと思ってくれる可能性が高いでしょう。
例えばロープレを実施することで自分の話していることが誰にでも分かるレベルに仕上げることで、お客様の前でも自信をもって面談できるようになります。ロープレの一環として社内の人でなく友人など、この業界の話を一度も聞いたことがない方に話してみて、分かりやすかったか、意味が分からないところがなかったかだけフィードバックをもらう、ということをぜひ試してみて下さい。ほぼ実践の経験となり、リアルなお客様の聞こえ方を知る貴重な経験になります。

まとめ
投資商品や保険は複雑ですが、その複雑さをお客様に負担させず、理解しやすい言葉で伝えることはFP・保険営業の腕の見せどころです。専門用語を使うことが当たり前という意識を消して、お客様の立場に立った説明を心がけましょう。そうすることで、信頼関係が生まれ、お客様にとって最適なプランを一緒に考えることができるのです。