[FP/保険営業の相談]ありがちな失敗例④【相手を褒めない】

はじめに
FP相談するお客様はお金のことで悩んでいて相談しにくることが多いです。悩みを解決してほしく相談にくるお客様に対して、しばしばFPは自分の知識や経験、コンサルティング能力を伝えるために自分の話をしがちだったり、お客様がうまくお金の計画をためられていない時にともすればお客様にプレッシャーをかけがちであったりする。

月々1万円の貯蓄であっても、そのお客様にとっては必死で工面した1万円かもしれない。人は誰でも否定されたり、認めてもらえないと悲しい気持ちになるものです。FPにはお客様のお金の問題を解決することが当然求められますが、まずお客様の気持ちを理解して、お客様なりに頑張ってきたことは認めてあげる、褒めてあげるということが大事です。これはカウンセラーとしての重要な要素です。そのようなコミュニケーションがお客様を安心させ、信頼関係をつくるきっかけになることもあるのです。

1. カウンセラーの重要要素

人は誰しも褒められれば嬉しいものであり、褒められることでFPとの信頼関係に繋がります。FPの仕事も立派なカウンセラーです。カウンセラーとしての重要要素を列挙します。

・認める:素晴らしいお考えですねなど、相手のことを認めることです。
・褒める:特に相手が意識していないようなことでも素晴らしいことはほめることも効果的です。
・肯定する:相手の発言内容を「まずは」そのまま受け入れること。 傾聴スキルの「オウム返し」なども有効です。
・賛成する:「よくご存じですね」「ぜひ実行していきましょう」など。

これらの褒め言葉でどれ程の効果があるのかと思うかもしれませんが、人は事実でなく言葉に反応するものなのです。上記の頭文字をひろって「みほこさんの法則」と呼ばれる話法です。

「みほこさんの法則」によれば、コミュニケーションにおいて「認める」「褒める」「肯定する」「賛同する」の四つの要素は、相手に良い印象を与えるコミュニケーションの基本です。これらは、人とのつながりを深め、信頼関係を築くために不可欠な要素です。特に、ファイナンシャルプランナーや保険営業がお客様との関係を築く上で、褒めるスキルは極めて重要となります。

2.人は褒められるとどう感じるのか
心理学においては、褒められることによって人々が感じる快感は、報酬系と呼ばれる脳の部分を刺激します。これにより、ドーパミンという化学物質が放出され、気分が高揚し、自己効力感が増すと言われています。褒められるという経験は自尊心を高め、前向きな自己像を強化し、さらにその行動を繰り返そうとする動機付けにもなります。
この効果は面談において大いに役立ちます。お客様は相談したいという思いと、対峙しているFPや保険営業を信頼して良いかどうか見極めたいという思いと両方抱えながら面談が始まります。そんなお客様が相談したい内容や、自身の家計のお金についての問題解決に向けて必要な情報は、信頼した相手でなければ全てを話したいと感じません。お客様からの信頼があってこそ、本質的な問題解決に繋がるものです。例えば、教育資金の相談に来たお客様が面談冒頭では口にしなかったが、実はまとまったお金を相続したので預け先に困っていた、そういったケースは信頼がうまれることで後々に追加相談になることがよくあります。つまり、褒めることがお客様の本音を引き出すことに繋がるのです。

3.人は全く褒めてくれない相手をどう思うのか
では逆に面談においてお客様を褒めないとどうなるでしょうか。
FPや保険営業から一切褒める言葉を受けないお客様は、FPや保険営業に対して冷たさを感じるかもしれません。お客様は自分のお金の管理方法や積立に対する意見が全く価値あるものとして扱われていないと感じ、それが不満や信頼の欠如につながることがあります。
このケースではFPは、お客様が貯蓄ができていないことに対して否定的な言葉で返す必要はありません。本当は将来に向けて積立をしたい、という言葉がお客様からでてくるのであれば、その言葉を肯定し、賛同する、意見そのものを褒めることで、お客様のヤル気スイッチが入るのです。
今は貯蓄できていないけど、「これから少しずつ積立を始めていきたい」というお客様に対しての回答例を挙げてみます。                       
A.「今は貯蓄できていないのですね。これから始めていきたい、とは月々どれくらいでお考えですか?」               
B.「お金の管理って学校で教えてもらえるわけでもないですし難しいですよね。その中で老後資金に対して積立を計画したい、というお考えは大変素晴らしいですね。無理なく実行、継続できる計画を考えていきましょう!」
みなさんだったらどちらのFPと話をしたいですか?              

4.どうすれば褒めるスキルが身につくのか
3に例示したように、肯定や褒める言葉を入れるかどうかという少しのことでも、お客様に与える印象は大きく異なります。一方でこういった対応をしっかりできているFP/保険営業は多くはありません。褒めるスキルは、普段の訓練やロープレを繰り返すことで必ず身につきます。慣れないうちは紙に書き出して目につく壁などに貼っておくのも有効な手段です。具体的で、誠実な褒め言葉を学び、相手の努力や成果を正確に表現することが大切です。また、定期的なロープレで得たフィードバックを通じて、自分のコミュニケーションスタイルについて学び、改善することも有効です。最後に、他者の良い点を見つけ、それを声に出して伝えることを習慣化することで身についていきます。
褒めることに慣れておらず言葉選びが難しいと感じるかもしれません。優績な保険営業から「お客様を恋人だと思えば言葉選びに困らない」と聞いたことがあります。冗談みたいな例えですが、営業職で用いる心理学は恋愛における心理学と同じものが多いです。どちらも相手からの印象を良くしようとする為に必要な知識やスキル、言葉選びなので納得です。

おわりに
相手を褒めることは、単に良い印象を与えるだけではなく、カウンセリングの本質としての役割を果たします。信頼関係を深め、満足度の高い面談となる可能性を高めてくれます。「みほこさんの法則」を念頭に置いて面談に臨んでいきましょう。