[FP/保険営業の相談]ありがちな失敗例⑤【傾聴しない】

はじめに
お金の相談をする際、あなたはどんなことに注意して面談を進めていますか?今日は話を聞くことの重要性について解説していきます。
筆者の経験上、多くのFPや保険営業は、お客様の話を聞くよりも自分が話すということに一生懸命になっています。保険会社の初期研修などでは話し方のスクリプトが存在し、スクリプト通りに話をすることを奨励している会社もあります。そのやり方が間違っているとは言いませんが、FPや保険営業の仕事がお客様のお金の問題を解決する仕事である以上、お客様それぞれの状況に合わせてしっかり話を聞き、お客様の悩みの本質がどこになるのかをしっかり把握することが重要です。
とある優秀なFPは「自分が面談中8割話をしているとお客様は逃げていく」「お客様の話を聞く時間を面談中8割にすると信頼が得られる」と話していました。
「話を聞く」という分野には「傾聴スキル」という、立派に体系建てられた話の利き方が存在します。今回は傾聴スキルについて具体例を交えて解説していきます。
とても重要なポイントなので、「傾聴」という言葉を聞いたことがないFPや保険営業の方はぜひ参考にしてください。

1.傾聴とは
傾聴とは英語で「Active Listening」と表現され、カウンセリングスキルの1つです。相手の話に関心を持ち、共感を示しながら聴くことであり、ただ漠然と相手の話を耳に入れて聞くこととは異なります。傾聴を活用したコミュニケーションではお客様もFP/保険営業側を理解してくれるようになり、面談において良好な人間関係をスムーズに築けます。
傾聴には、3つのステップがあります。これらはすべて、お客様の話を理解しようとする姿勢を表します。
①受動的傾聴(ex.相槌を打つ)
お客様の話すペースに合わせて肯定的な言葉で相槌を打ちながら、真摯にお客様の話に耳を傾けます。 相槌のペースが合わないと、話し手はしゃべりにくくなってしまいますし、否定的な相槌は共感的理解に欠けてしまうためです。 このように受動的傾聴を続けていると、沈黙が訪れることがあります。 この沈黙や間は話の内容が深刻だったり、重要だったりする時ほど起こりやすくなりますが、話が途切れているのではなく、話し手の中で自問自答や葛藤が続いていると捉え、話し手が何かを話し出すまで待つことが必要です。

②反映的傾聴(ex.オウム返し)
話の内容を確認するために、言葉を返すこと。
相手の言葉を繰り返して相槌を打ちながら聴く方法です。 繰り返しの相槌は明快に、短く、要点を掴んで、相手の使った言葉で行うのがポイントです。オウム返しが面談において有効になり得るのはこのためです。 反映的傾聴を行うと、お客様はFP/保険営業に話の内容と自分の気持ちが理解されたと感じます。 オウム返しだけをずっと繰り返してしまうと、効果が薄れることもあるのでお客様が使った言葉で要点をまとめた相槌をすることがより効果的です。

③積極的傾聴(ex.考えをまとめる)
相手の感情や意図を理解し、それに対応すること。
相槌に加えてお客様の発言に言葉を添えたり質問をしたりして、より深く考えることを促す聴き方です。 質問する時は「お客様自ら進んでそのことを考えて答えたくなり、回答をした先に気付きや行動がある質問」をするように心掛けましょう。相槌やオウム返しと同時に、お客様の考えを自分の言葉に置き換える、まとめるなどしながら反復すると効果的です。

2.FPや保険営業が傾聴を必要とするのは何故か
お客様一人一人のニーズは異なります。例えば、家族構成や将来のお金の計画に応じて、保険の必要性や種類は大きく変わります。傾聴を通じて、お客様が話をしっかり聞いてくれている、自分のことを理解してくれていると感じられるようになるので、結果的に信頼感が生まれます。初回面談の目的はお客様のニーズの把握、信頼関係の構築なので、傾聴ほど役に立つものはないと言えます。

3.傾聴しないで面談を進めるとどうなるのか
傾聴しないで面談を進めると、お客様により大きな不安を生じさせます。そのためお客様に安心して話をしてもらえずニーズを見逃したり、誤解を生じさせたりすることがあります。例えば、傾聴をせずにFPがお客様の話を遮るように自分の話をすると、お客様は不快に感じます。昨今、需要が高まっているオンライン面談では特にFPとお客様の距離感が縮みにくいと言われているなか、お客様に話を聴いてもらえている、自分のことを理解してくれていると感じてもらえなければ面談が好転することは難しいでしょう。結果として、適切なアドバイスやサービスを提供できず、お客様の信頼を失うリスクが高まります。

4.傾聴のスキルはトレーニングで身につく
傾聴のスキルは、トレーニングを通じて向上させることができます。お客様に多く話してもらい、FP/保険営業は主に聞く役割を持つようにしましょう。これまで傾聴をしてこなかった方ははじめ自分が話をするのではなく、傾聴をするということに大きな違和感を感じるかもしれません。しかし、例えば相槌やオウム返しを意識して使ってみると、お客様との会話の質が変わって行くことをすぐに実感できるでしょう。
お客様の話をうなずきながらまとめる技術は、話の要点を把握し、お客様が話したことを理解していることを示すのに役立ちます。例えば、お客様が複数の保険オプションについて検討している場合、「ご家族のために、長期的な保障を考えていらっしゃるということですね」といった形で、話の要約を行います。これにより、お客様は自分のニーズや懸念が正しく理解されていると感じ、さらに深い情報を共有する可能性が高まります。
これらの傾聴スキルは、FPや保険営業において、お客様のニーズを正確に理解し、信頼関係を築く上で非常に重要です。適切に使用することで、より効果的なコミュニケーションが可能になり、お客様にとって最適なサービスを提供することができるようになります。

おわりに
傾聴はFPや保険営業にとって不可欠なスキルです。お客様の話を真剣に聞くことで、ニーズを深く理解し、信頼関係を築くことができます。お客様からの目線で言うとFP/保険営業としてではなく、まず信頼できる人として見てもらうことに繋がります。信頼できる人が更にお金のプロだから是非、相談したい、というお客様心理を日々の業務の中で傾聴のスキルを磨き、お客様にとって最適なサービスを提供しましょう。